Shinichi Takeda
ミスター NO の 部屋
第008回 死んだら…
前にさ
死語の世界って
言ったつもりだったんだけど
死後の世界と勘違いされちゃって。
死後の世界なんてあるわけないじゃない。
そんなことどうでもいいんだけどさ。
でもさ、自分が死んだらさ、
葬式ぐらいしてくれるでしょ。
そしたら、火葬でしょ。
仮想じゃないからね。
でさー、思っちゃうのよわたし。
最近、環境だの汚染だの。
やかましいじゃない。
死んだ人間を火で焼いたらさぁ
呼吸とまってんのにさ、
もんのすごい酸素使っちゃうじゃない。
しかもよ、二酸化炭素の排出量、ハンパないじゃん。
それってさ、死んで花実が咲くものかっていうけどさ、
立つ鳥跡を濁さずジャン。
旅立った奴は、環境汚染しまくっちゃってるじゃん。
火葬、絶対だめだと思わない?
わたしって変?
でさー、考えたんだけど…
人工衛星ってあるじゃない。
あれってさ、地球のまわりをさ、
グリングリン、まわってるやつでしょ。
しかも、永久に回り続けるじゃない。
死んだ人はさ、ロケットで運んで、
人工衛星の軌道に置いておいたらいいんじゃない?
どう、このアイデア。
だってさぁ、宇宙って氷のように冷たいじゃん。
永久冷凍保存できるってわけ。
しかもよ、ねぇ、聞いてよ。聞いてる?
人工衛星ってさ、流れ星みたいに夜空を光り輝きながらかざってくれるでしょ。
宇宙にでて、凍った死体も光り輝くにきまってるじゃない。
夜空を見上げて、
『ほら、いま先月、死んだおじいちゃんがキラって輝きながら、通ったよ』
『願いをかけたら、叶うかも』
なんて会話ができるじゃん。
すげー、ロマンチック!
会話がはずむにきまってる。
だって、お通夜のときなんてさ、
みんな泣いちゃって、
どうしていいかわからないじゃない。
しかも、お酒がはいってさ、
いつもより、悪酔いする人っているじゃない。
しかも、泣きまくられたらサイテ-。
それよかさ、夜空を見上げながら、肩をそっと抱かれて
ロマンチックに語り合ったら、
自然と流れ落ちる涙もロマンチックじゃない。
絶対、いいわー。
みんなは、そう思わないの?
でさー、
あんまり、夜空に輝く死体が輝いたら、気持ち悪いじゃない。
それでさ、何周かしたら、地球に落下するように軌道計算しておいたらさ、
もう、十分。
初七日は速すぎるから、
そそ、四十九日を過ぎてからでもいいよね。
それか、一回忌でもいいよ。
ロケットで打ち上げてもらうときさ、
ご遺族に、何月何日の何時何分(JST)に地球の大気圏に突入します。
って、報告してもらったらいいよね。
でもさ、見えないといけないから、
日本から見えるところで、落ちてもらわないとさ、
こまっちゃう。
それにさ、大気圏に突入した段階で、
ぼわーって光輝いて、
一瞬で焼けて骨もなくなるってこと。
ちょっと、消えてなくなっちゃうけど
その方が、エネルギー使わなくて、エコじゃん。
しかも、死体が流れ星になって消えるから最高!
あ、ちょっと待って。
そうそう、ロケットがあんまりエコじゃないか。
じゃぁ、
気球でもいいんじゃない?
ま、あんまり、深いこと考えんの辞めようよ。
でも…
ほんと、死んだあとはさ、湿っぽい葬式されるより、
宇宙で輝いていたいって思うのはわたしだけ?
(つづく)