Shinichi Takeda
ミスター NO の 部屋
第006回 年齢
あのさ、女の子にとって、歳を聞かれるのって微妙。
だって、上に見られたいとき、下に思われたり、
下に見られたいとき、上に見られたり。
いやじゃない?
それなりに、着こなし、変えてんの、わかんないかしらね。
それくらいの乙女心、読み取ってよ。
でもさ、歳なんて聞くのおかしいよね。
聞かなきゃいいじゃん。
なんで、知りたいんだろ。
『愛に歳の差なんて…』って言うわりに
年の差、大有りよね。
わたしのこと、独占したいのかしら。
そんなのお断りよ。
ほんと、大人って勝手なんだから。
歳をきいてどうすんのさ。
わたしのことを目下、目上なんて関係でみたいのかしら。
そもそも、歳を話題にしたがる日本人って大っきらい。
むかーしっから、
偉い人ってきまってるもんね。
実力なくたって、居座ったら、偉い人。
イスに座って、鼻毛抜いてたら、偉い人。
なんか、変じゃん。
長い間、年功序列だったニッポンだから仕方ないけど
ちょっと、最近は変わってきちゃいるけど
おんなじよね。
歴史をひもときゃ、けっこう、実力を重視してた時代もあったのに、ね。
朱子学なんてのがあるから、邪魔すんのよ。
日本人ってなにかっていうと
儒学だの朱子学の思想にいきついちゃうから。
いまどき、中国でも、もう、言ってないんじゃない?
ほんと、身分とか秩序とかさ。
なんでそんなに大切にするんだろ。
たしかに大切だよ。
でも、大切にしすぎじゃん。
それって、過保護じゃん。
実力を重視した歴史っていえばさ…
冠位十二階の制くらい、覚えてるでしょ。
え、古い?
じゃ、さー。享保の改革の徳川吉宗。積極的に人材を登用してるよ。
しかも、能力第一だよ。
そこらへんでいばってるやつなんか、登用してないじゃん。
貧しい母ちゃんの子だから、すっごく、本人、倹約して育ってるし。
偉い奴もいたのにさ。
最近の日本は、やっぱり、経験者じゃないとだめって感じ。
実力があったり、本当のことを言ったりしたら
もう、ぜんぜん受け入れないでしょ。
しかも、変な眼でみられちゃうじゃん。
あれ、どういうことなんだろ?
しかも、屈託のないご意見をどうぞ…なんていうわりに、
屈託あったら、結局、白目、むけられちゃうし。
会議なんてさ、率直な意見のほうが大切だと思うけど
成績にさわるから…
昇進があぶないから…
結局、ありきたりのことをさ
まだ、しどろもどろにさ
つっかえつっかえさ
ゆっくりさ
いってばっかで
眠くなっちゃうじゃん。
まどろっこしいんだよ。
そんな話し合い、10分で終わらしゃいいのに。
どうせ、結論なんて、決まってんだし。
あれ、はなしがかわっちゃった?
ひとり言、言ってたんだけど…
でもさ、歳って、意外と身分とか、
目上、目下を表すためのものだから…
結局のところ、
付き合うためには、
相手の地位を確認しないとだめってことでしょ。
あのさ、恋愛だけじゃないよ。
わたしの言ってるの、わかるでしょ。
世間一般の付き合いよ。
なに?わたしと付き合いたいの?
そんなのお断りよ。
見ず知らずの人となんて、
そんなにわたし、軽くないからね。
ま、いいや。話、もどそ。
奈良時代から、お隣中国にならって
戸籍ができて…
良民と賤民に分けられて…
江戸時代は、
『身分=職業』
しかも、徹底して『えた身分』『ひにん身分』とか
身分で差別されてるし。
国をあげての差別だし。
そのわりにさ、
武士は給料もらってんのに、安月給で傘張りなんてバイトしちゃったりさ。
いいとばっちりじゃん。
だって、特権持ってる奴が、バイトしなきゃいけないんだよ。
考えてごらんよ。
地位なんてないじゃん。
ちょんまげ、ゆるされたり、帯刀ゆるされたり、名字ゆるさたり。
意味ないじゃん。
それにさ、あんまり貧乏だからって
武士を誰と結婚させてたか知ってる?
そのころさ、
金持ちっていえば、商人でしょ。
商人の娘と縁組させちゃったってわけ。
『逆玉の輿』よね。
わかる?
でもさ、さっき書いたでしょ。
『身分=職業』
町人と武士がくっついちゃってるじゃん。
いいの、それ?
商人のガードマンになっちゃうじゃん。
そこらへんにごろつきと結婚されてるのとおんなじ?
背に腹は代えられなかったのかな?
朱子学なんて、勉強してたのに…
恥さらしじゃん。
身分も秩序もないじゃん。
だっからさ、
歳なんて、考えなくていいのよ。
わたしのことだけ見てくれたら。
それでいいのに。
歳、聞く人、サイテーよね。
(つづく)